前を向こうとするほど、疲れが残ることがあります
「ポジティブにいこう」「感謝しよう」「未来だけ見て」。こうした言葉に励まされようとしてきた、という記録があります。書き手は、どれだけ前を向こうとしても、心と体はずっと疲れたままだったと振り返っています。
人の機嫌に敏感で、空気を読むのが得意だった。ただしそれは特技というより、習慣化した緊張だったように思う。この一文が、疲れの出どころを言い当てています。
自分を変えたくて、心理学の本を読み、メンタル系の動画を観て、呼吸法や瞑想も試した。それでも結局また元に戻る。「やっぱり私ってダメなのかな…」と思い始めた、という順序で書かれています。
HSPは診断名ではありません
最近よく聞くHSPという言葉について、この方は診断されたわけではないと断っています。ただ、その説明に出てくる感覚過敏や、音や光の疲れやすさは、日常そのものだったといいます。
ここは押さえておきたいところです。HSPは医学的な診断名ではなく、疾患として扱うものでもありません。自分の感じ方を説明する言葉として使うのと、診断の代わりに使うのとでは、置き場所がまったく違います。
体調や気持ちの不調が続いているときに要るのは、言葉のラベルではなく、医療機関で確かめることのほうです。
変わろうとしなくてよい、と言われた
この方がたどり着いた場所が他と違ったのは、前向きになることや変わろうとすることを一切求められなかった点でした。むしろ「癒えてないのに、無理に進まなくていい」と言ってもらえた、と書かれています。
「がんばらないと意味がない」と無意識に思い込みすぎていたので、最初は戸惑ったそうです。それでも続けるうちに少しずつ感覚が戻ってきて、無理にがんばらないでいることが、こんなにも心地よいとは思わなかったと振り返っています。
呼吸、視線、筋肉、神経。一見地味なことのようでも、それらと静かに向き合う中で、心がふっとほどけていく瞬間が増えていった。そうして「ちゃんとここにいていい」と思えるようになった、という記録です。
芯は、外から足すものではありません
過去に何十万円も使って通った場所が虚しく終わった経験があると、次も同じことになるのではないかと疑いたくなります。この方も、そう疑っていたと書いています。
それでも印象に残ったのは、過去を否定されなかったという一点でした。「それも大切な経験ですよ」と受け止められ、「無駄じゃなかった」と思えたことに驚いた、とあります。
芯は、外から足すものではなく、もともとある側です。始まりは、足りないものを探すところではなく、いま自分がどんな感じ方をしているかを見るところに置かれています。
前向きになれない自分を直す、という宿題が消えます。いまの感じ方を、そのまま材料にできるからです。過去に費やした時間も、否定する対象から、手持ちの材料に変わる。足りないものを埋める作業が、もともとある側を使う作業に置き換わります。