「気になっていることなんて、特にないかも」——そう感じても、まったく正常です
紙のノートを、一冊、机に置いてみてください。
新品でなくて、構いません。書き終わったノートの、白いページが残っている部分でも、いい。
そのノートに、こう書き出してみてください。
「自分が、現場で繰り返し気になってきたことは、何だろうか」
最初の一行が、なかなか出てこないかもしれません。「気になっていることなんて、特にないかも」と感じる方もいらっしゃるはずです。
──そう感じても、まったく正常です。
今回お伝えするのは、「自分の名前で動く」の最初の一歩です。
会社を作る話ではありません。資格を取る話でもありません。明日からできる、3つの小さなアクションです。
20年かかって私が見つけた問いを、あなたが半年で見つけるための、最短のルート。それを、3つのステップに整理してお渡しします。
「答え」ではなく「問い」を書く——ステップ1:気になり続けてきたことを、ノートに書き出す
経済独立の第一歩は、収入を増やすことではありません。
自分が、何にずっと気になってきたかを、自分自身に明確にすることです。
具体的には、こうします。紙のノートを一冊用意して、こんな問いに、自分で答えを書き出してみてください。
- 現場(仕事)で、繰り返し気になってきたことは、何だろうか。例:「同じ手術なのに、なぜか結果が違う患者さんがいる」(私の場合)
- その違和感を、これまで誰かに話したことはあるか
- 話したとき、相手はどんな反応だったか
- その問いを、いまでも考えているか
最低でも5つ、できれば10個、思い浮かぶことを書き出してみる。
ここで、いちばん大事なポイントを、お伝えします。
「答え」ではなく「問い」を書くということ。
「自分は何ができるか」ではなく、「自分は何が気になってきたか」を集めるのです。
書き出してみると、いくつかの問いが、何度も形を変えて出てきていることに気づきます。それが、あなたの「ひとつの問い」です。
私の場合は「心と体は、本当に切り離して扱えるのか」でした。あなたの場合は、また別の問いがあるはずです。
「それ、心理学っぽいね」——ステップ2:その問いを、ひとりだけに話してみる
ノートに書いた問いを、信頼できる誰か、ひとりに話してみる。
家族でも、友人でも、同僚でも、SNSでつながっている方でも構いません。できれば、医療業界の外の方が、いいです。
なぜ業界の外の人がいいかというと、医療業界の中で話すと、「いや、それは医学的にこうだから」と、既存の枠組みで答えを返されてしまうから。
業界の外の方は、純粋にあなたの問いを、聞いてくれます。
「面白いね」と言ってくれるかもしれません。「もう少し聞きたい」と言ってくれるかもしれません。あるいは、「全然わからない」と言われるかもしれません。
どんな反応でも、構わないのです。
大事なのは、自分の問いを、声に出して言葉にすること。頭の中だけにある問いと、声に出した問いは、まったく違う輪郭を持ちます。
私自身、20年前に、整形外科の診察室で感じた違和感を、最初に話したのは、医療業界の外の友人でした。
その方は、こう言いました。
「それ、心理学っぽいね」
その一言が、私を産業医の道に向かわせた最初のきっかけです。
複数同時に始めると、必ずどれも続きません——ステップ3:問いを「届ける形」を、ひとつだけ試す
問いを書き出し、ひとりに話したら、次は「問いを届ける形」を、ひとつだけ試してみる。
たとえば、こんな形があります。
- noteに、その問いについての文章を、1本書いてみる
- 同業者向けの勉強会で、その問いを話してみる
- ブログを開設して、最初の記事を書いてみる
- 友人を集めて、その問いを話すお茶会を開いてみる
なんでもいい。ただし、「ひとつだけ」試すのが、鉄則です。
複数同時に始めると、必ずどれも続きません。
ひとつだけ選んで、ひとつだけ試して、反応を観察する。反応が良かったら、続ける。反応が薄かったら、別の形を試す。これだけです。
「会社を作る」「独立する」「副業を本格的に始める」は、すべて、ここから後の話。3つのステップの順番を、間違えないことだけが、いちばん大事です。
「動いてはいるのに、線として繋がらない」——ステップを試してみて、感じる二つの壁
ここまで3つのステップをお伝えしました。シンプルですが、決して簡単ではありません。
実際に始めてみると、医療従事者の方々が、必ずぶつかる「二つの壁」があります。これは、私がお話を伺ってきた中でも、繰り返し出てくる壁です。
一つめの壁は、「動いてはいるのに、線として繋がらない」。
夜遅くにスマホでnoteを漁って、副業ブログを読み込んで、動画を見尽くしてきた。「無料」セミナーにも、いくつか登録した。それなのに、自分の中で、どれも線として繋がらない──。
これは、能力の問題ではなく、「整理棚」がないだけです。
ご自身の活動を、医師なら4つの柱(組織・市場・自分・資産)、看護師・PT・OT・薬剤師なら5つの形(現場・現場で名前・伝える・直接届ける・資産)で整理棚に並べ直してみてください。散らかっていたのではなく、棚がなかっただけ、と気づくはずです。
二つめの壁は、「無料じゃダメだとわかった。でも、誰に払えばいいかが分からない」。
「無料」の情報だけを集めていても、自分の中の値段の感覚は育たない。
では、誰に払えばいいのか。これが、最大のつまずきです。
医療現場の言葉が通じる人で、なおかつ、外の世界で価値を見抜く目線を持っている人──。その二つを兼ね備えた相手は、日本にはまだ、ほとんどいません。だからこそ、そういう稀な相手を見つけることそのものが、最短コースの一部です。
「いい値段で価値を受け取る側を経験する」ことが、自分の中の値段の感覚を育てる、はじめの一つです。「無料」の情報を100時間集めても、その感覚は育ちません。「自分は、この時間に、いくらの価値があると判断したか」を、自分の財布で確かめた経験が、値段の感覚を育てます。
「これでいいのか、不安だ」——20年前の私自身が、同じ場所にいました
ここまで読んでくださって、こう感じる方も、いらっしゃるかもしれません。
「3つのステップは、わかった。でも、自分の問いが本当に何なのか、自分ではよく分からない」
「書き出しては、みた。でも、これでいいのか、不安だ」
「ひとりに話す、と言われても、誰に話せばいいか、わからない」
その気持ち、よく分かります。20年前の私自身が、同じ場所にいました。
最後に、いちばんお伝えしたかったことを、ひとつだけ書きます。
あなたの専門性は、診察室や病棟の中だけで使われるべきものではありません。
20年、30年と積み上げてきた知見、観察、判断、技術──これらは、現場の外でも、必要としている方がいます。その方たちのところへ、あなたの専門性を届けるための入口が、「ひとつの問い」を見つけることです。
会社を作るのも、独立するのも、副業を始めるのも、すべて、その後の話。順番を間違えなければ、医療従事者の「小さな経済独立」は、決して特別なことではありません。
医師の同期、看護師の同期、理学療法士の同期、作業療法士の同期、薬剤師の同期──職種は違っても、同じ問いを抱えて、ここまで読んでくださった皆さんに、心からの感謝を伝えます。
夜遅くまで記事を読み漁って、翌朝そのまま出勤して、手元には何も残っていない。ここからは、抜けられます。
抜けたあとは、机の上のノートに、自分の問いが1行で書いてあります。何を読んで、何を読まないかが、その1行で決まります。
そのうち、言われます。「その話、もう少し聞かせてください」。声をかけてきたのは、職場の外の人です。