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私の働き方 ── 整形外科医が20年検証してきた「心と体は切り離せない」

年齢も手術の内容もほとんど同じ二人の患者さんで、半年後の結果が違いました。なぜ、こんなにも違う結果になるのか。

公開日:2026年6月18日 / 働き方を見直す

体の状態は、ほぼ同じ。それなのに、結果が違いました——始まりは、整形外科医としての違和感

ある日の、整形外科の外来でのことです。

膝の手術を終えて、リハビリの段階に入った二人の患者さんがいました。

年齢も、手術の内容も、ほとんど同じ。
レントゲンで見える骨の状態も、変わらない。

なのに、半年後、結果が違いました。

一人の方は、痛みもとれて、以前のように歩いておられる。

もう一人の方は、痛みはあまり変わらず、リハビリにも気持ちが向かない。

体の状態は、ほぼ同じ。
それなのに、なぜ、こんなにも違う結果になるのか。

整形外科医として臨床に立ち始めて、しばらくしてから、この種の違和感を、何度も感じるようになりました。

教科書には、こう書かれています。
「結果の差は、年齢、体力、リハビリへの取り組み方が影響する」と。

これは正しいです。
でも、それだけでは説明しきれない何かが、明らかにありました。

患者さんの「考え方」「捉え方」「日々の心の持ちよう」が、回復に大きく影響している──そう感じる場面が、いくつも積み重なっていきました。

これが、私の20年の出発点でした。

そして、20年経ったいま、私はこの問いを、こう言葉にしています。

「心と体は、本当に切り離して扱えるのか」

今回は、この問いを20年検証し続けてきた、私自身の働き方を、できるだけ正直にお伝えします。

医師・看護師・PT・OT・薬剤師として、いまの場所で働きながら、「自分の名前で動く」とはどういうことなのか──その実例として、ご覧いただければと思います。

私は、整形外科医として長年、「体」を扱ってきました。
骨を診て、関節を診て、筋肉を診る。
画像を読んで、手術もする。
これは、医師として教育を受けてきた、正統な仕事です。

最初は、医学の中で答えを探しました。

「もしかして、リハビリのプロトコルが甘いのか」「術後の管理が違うのか」と、自分の仕事を見直しました。

でも、見直せば見直すほど、答えは医学の外にありそうだ、と感じるようになりました。

患者さんの暮らし。
患者さんの家族との関係。
患者さんが、自分の体をどう捉えているか。

「治るかもしれない」と思っているか、「もう治らない」と思っているか。

こうした、体の外の要因が、体の回復に明らかに影響している。
これは、医学だけで扱える話ではありませんでした。

腰痛の話をじっくり聞くと、上司との関係の話が出てきます——産業医として、「心と組織」の現場に入る

整形外科の臨床を続けながら、産業医の資格も取りました。
産業医というのは、企業で働く方々の健康を担当する医師です。

腰痛、肩こり、メンタルの不調、生活習慣病──いろんな症状が、現場に持ち込まれます。

ここで、私はさらに、はっきり気づきました。
身体に現れている症状の多くは、心の状態や、職場の状態と、つながっているということ。

腰痛で困っている方の話をじっくり聞くと、上司との関係の話が出てきます。

肩こりがひどい方の話を聞くと、家庭での役割の重さが出てきます。

メンタルの不調を訴える方の手前には、いつも体のサインがあります。

整形外科の診察室で感じた違和感が、産業医の現場で、明確な仮説になっていきました。

「心と体は、切り離して扱えない」

これを、私は本気で検証してみたい、と思うようになりました。

仮説を立てるだけでは、医師として無責任です——スラトレ®メソッドの開発

仮説は、誰にでも使える形に落とし込まなければ、ただの個人の経験談で終わってしまいます。

そこで、私は「心と体の統合」を、ひとつの方法に落とし込む作業を始めました。
それが、スラトレ®(メンタル思考トレーニング)と呼ばれる方法です。

スラトレ®では、体の動きを通じて、思考の癖を整える。
逆に、思考の整理を通じて、体の反応を整える。

「心が先か、体が先か」という二択ではなく、両方を同時に扱う。
そういう方法を、開発し、検証し、改善し続けてきました。
20年の試行錯誤の中で、最も時間を注いだ仕事の一つです。

ここで一つ、お断りしておきます。

スラトレ®は、「これをやれば必ず良くなる」と断定するための方法ではありません。
自分の心と体の状態を、自分で整えるきっかけを作るための方法です。

判断の主体は、あくまでも、その方ご自身。
私たちは、その判断の材料と、整えるための入口を、お渡ししているだけです。

私一人が伝えていたら、届く人は限られます——認定トレーナー養成

メソッドを開発しても、私一人が伝えていたら、届く人は限られます。

そこで、スラトレ®を正しく伝えられる人を育てる「認定トレーナー養成講座」を始めました。
これも、私の活動の柱の一つです。

医師でなくても、専門的な訓練を受けた方なら、スラトレ®を伝えることができます。
看護師、理学療法士、作業療法士、薬剤師、コーチ、教育に関わる方──いろんな専門職の方が、認定トレーナーとして活動しておられます。

ここでも、「心と体は切り離せない」という問いは、形を変えて検証され続けています。

会社を持つことの意味は、節税でも、肩書きでもありません——株式会社ヤエコフという器

整形外科医、産業医、スラトレ®開発者、認定トレーナー養成講師──。
これらの活動を、ひとつの場所で統合するために、私は株式会社ヤエコフを立ち上げました。

「自分の活動全体を、自分の名前と価値観で運営する場」を持つこと。
これだけです。

そして、その経営の中で、私はもう一つの実験を続けています。

「ビジネスの世界でも、心と体は切り離せないのか」

経営判断、組織運営、人との関わり──これらは、一見「頭の仕事」に見えます。
でも、20年の経営の中で見えてきたのは、これでした。

経営者の体の状態が、判断の質を直接、左右する。

疲れているときの判断は、必ずどこかが偏ります。
心が乱れているときの会議は、必ず空回りします。

ここでも、「心と体は切り離せない」は、形を変えて検証され続けているのです。

私は、ひとつのことしか、やっていません——4つの活動が示す、ひとつの答え

ここまで読んでくださって、こう感じている方もいらっしゃるかもしれません。

「Dr.EKOは、医師、産業医、メソッド開発者、トレーナー養成、経営者──いろんなことをやっていて、結局、何の人なんだろう?」

その問いへの答えは、シンプルです。

私は、ひとつのことしか、やっていません。

「心と体は切り離せない」というひとつの問いを、20年、検証し続けてきた。

医師という入口から始まり、産業医に広がり、メソッドに結晶化し、トレーナー養成に展開し、経営という現場でも検証している──。
すべての活動が、同じひとつの問いの周りを、回っているだけです。

そして、ここで、一つ思い出していただきたいことがあります。

眼科、整形外科、外科系──「身体を直接扱う領域」のほうが、今でも医師オーナー比率がぐっと高い。

これは、偶然ではないと、私は考えています。

身体を扱う医療従事者は、もともと「目に見える成果」「触れて確かめられる手応え」を、毎日経験しているからです。
その積み重ねが、「自分の名前と価値観で動く」感覚と、相性が良いのです。

整形外科医・産業医・PT・OT・看護師──身体を扱う日々の現場で得ている手応えは、現場の外でも、必ず活きます。
これは、私自身の20年が、ささやかに証明している点でもあります。

劇的な独立も、医局からの離脱も、私の場合は、していません——構造の中にいながら

念のため、お伝えしておきたいことがあります。

日本の医療従事者を取り囲む3つの構造。
たての階段、安心の屋根、家族のような職場文化。

私自身、この3つの構造の外に出たわけでは、ありません。

整形外科医として、医学の世界の中に身を置いてきた。
産業医として、保険診療の枠組みの中で活動してきた。
認定トレーナーの仲間たちとも、家族的なつながりを大切にしてきた。

つまり、私は「構造の中にいながら、その横に、もうひとつの自分の場所を作ってきた」だけです。

劇的な独立も、医局からの離脱も、私の場合は、していません。

今の場所を大切にしながら、同時に、自分の問いを動かす場所も、少しずつ作っていく。
これが、20年の試行錯誤の、いちばん正直な姿です。

「これだけはずっと気になってきた」というテーマが、必ず一つあるはずです——あなたの「ひとつの問い」は何か

私の話は、ここまでです。

でも、本当にお伝えしたいのは、私の話ではありません。
これを読んでくださっているあなたが、自分の中に持っている「ひとつの問い」に気づくきっかけになればと思います。

医師としての臨床経験。
看護師としての患者対応の蓄積。
理学療法士としての動作観察の眼。
作業療法士としての生活への眼差し。
薬剤師としての、薬への深い理解。

あなたが20年、30年と専門家として積み重ねてきた中で、「これだけはずっと気になってきた」というテーマが、必ず一つあるはずです。

そのテーマが見つかれば、「複数の収入源」も「自分の名前で動く」も、自然な結果として、後からついてきます。

順番が、逆ではないのです。
「副業を始める」「会社を作る」が先ではなく、「自分のひとつの問いを見つける」が先。

肩書きをいくつも並べても、結局何をしている人なのか、自分でも一言で言えない。
名刺を出すたびに、どれを先に言うか迷う。
ここからは、抜けられます。

抜けたあとは、20年ぶんの経験が、ひとつの問いの周りに並びます。
何を引き受けて、何を断るかが、その場で決まります。

そのうち、聞かれます。
「先生は、結局、何をされている方なんですか」。
そのとき答えるのは、肩書きの列ではなく、自分が20年追いかけてきた問いのほうです。

※本記事は情報提供を目的としており、医療行為・心理療法ではありません。個人の感想であり、効果を保証するものではありません。