数値が気になり始めたときに、まず置かれるもの
中性脂肪やコレステロールの数値が気になり始めると、プラーク形成をどう予防すればよいのか、と不安になる方が多いものです。ただし、予防法について確実で有効な方法を言及するのは難しいと言えます。
一般的に挙げられているのは六つです。LDLコレステロールと中性脂肪の管理。異常値を超えた場合の第1選択は薬剤の服用で、これは保険診療にあたります。高血圧の管理。糖尿病のコントロール。禁煙。適度な運動と健康的な食生活。
中性脂肪やコレステロール値が基準を超えてしまった場合、まず薬剤が第一の選択肢として挙がります。非薬剤での方法は、その選択肢を慎重に考える必要があります。これらの生活習慣の改善と適切な医療管理により、プラークの形成を抑制し、動脈硬化の進行を遅らせることが可能、とよく書かれています。
「適度な運動とは」という空欄
六つの一般論を読んだあとに残るのは、適度な運動とは何を指すのか、という疑問です。強度も、種目も、頻度も、この一覧の中には書かれていません。
この空欄に答えを置こうとしたのがEKOフィジカルです。関節や筋肉に良い影響があると広く知られているストレッチを、初期段階で重視する組み立てにしています。その背景には、血管の側から見た研究知見があります。
ストレッチと血管をめぐる研究
大学院生時代に参加した同僚の研究では、柔軟性と血管内皮機能が改善され、動脈スティフネスも改善されることが示されました。ストレッチ、つまり柔軟体操は血管の機能を良くする可能性がある、という示唆です。
新野弘美氏の研究では、スタティック・ストレッチングが血管内皮機能や動脈スティフネスに与える影響を検討しています。6ヶ月間のストレッチング介入により、柔軟性と血管内皮機能が改善され、動脈スティフネスも改善されることが示されました。ただし、血管新生に影響する血液性状には統計的な変化は見られませんでした。同氏は「筋も血管も若返り『バスキュラー・ストレッチ』」というテーマで講演も行っており、ストレッチングによる機械的な刺激が血管内皮細胞を活性化し、一酸化窒素の分泌を促進して血管を柔らかくする効果があるとされています。
ここで線を引いておきます。動脈硬化の進行抑制に関する主張は、直接的な証拠が限られています。研究で示されているのは動脈スティフネスと血管内皮機能の側であり、進行抑制については、さらなる長期的な研究が要ります。
王道の上に、もう一つ置くという選び方
裏話ですが、私は他のテーマを証明したかったのです。医学研究界ではよくあるリソース不足で、惜しくも証明はできませんでした。それでも、血管を優しくケアすること、特にストレッチが予防の側で意味を持つのではないか、というのが個人的な見解です。
プラーク予防の王道は、医師による診療と生活習慣の見直しです。そのうえで、柔軟体操を日々の習慣に取り入れるという選択肢も、血管を大切にする一つの視点として知っておいていただけたらと思います。長期的な効果についてはさらなる研究が要るため、新しい研究結果を取り入れながら組み立てを見直していく形になります。
新しい研究が出ても、慌てて乗り換えずに済みます。王道の上に何を一つ置いているかを、自分で説明できます。話題になったものを次々に足す形から、土台を決めてから足す形へ。情報が更新されるほど、選び方を持っている人の手元は静かになります。