通知が気になって休めない、という状態から
スマートフォンやパソコンが当たり前になり、大人も子どもも、仕事でもプライベートでも常にデジタルデバイスに囲まれています。スマホを手元から離せない、通知が気になってリラックスできない、なんとなく疲れが抜けない。こうした状態は、デジタル依存による影響かもしれません。
情報の洪水にさらされ続けることで、脳は休まる時間を失い、心身のバランスが崩れやすくなります。その対策として注目されているのがデジタルデトックスです。
デジタルデトックスとは、一定期間スマートフォンやパソコンなどのデジタルデバイスから距離を置き、心身をリフレッシュする取り組みを指します。完全にデバイスを断つ必要はありません。ポイントは、意識的にデジタルから離れる時間を作ること。これにより脳のリフレッシュ、ストレスの軽減、睡眠の質の向上などが期待できます。
各国が、子どものデジタル利用に線を引き始めています
デジタルデバイスの過度な使用が子どもの心身に与える影響は世界的に問題視されており、各国で規制が進んでいます。
オーストラリアでは2024年11月、16歳未満の子どもによるSNS利用を禁止する法案が可決され、2025年末から施行予定です。アメリカのフロリダ州では2024年3月に14歳未満の子どもがSNSアカウントを開設することを禁止する法律が制定され、全米50州のうち35州が子どものSNS利用に関する規制や保護策の導入を進めています。
フランスでは、15歳未満の子どもがSNSを利用する際に保護者の同意を必須とする法律が施行されています。イギリスでは政府が、16歳以下の子どもが学校でスマートフォンを使用することを禁止するガイドラインを発表しました。個人の心がけの話としてだけでなく、制度の側からも線が引かれ始めている、というのが現在地です。
室内にいるかぎり、刺激からは離れられません
たとえ田舎に住んでいても、室内にこもってスマホやパソコン、テレビ、ネット環境に囲まれていれば、デジタル社会の刺激からは逃れられません。観葉植物や人工グリーンにもリラックス効果はありますが、それだけでは本物の自然には及びません。意識的に外へ出て、実際に土に触れ、風を感じ、太陽の光を浴びることが大切です。
自然に囲まれた環境では人工的なノイズがなくなり、脳が本来のリズムを取り戻しやすくなります。緑の景色を眺める、風の音を聞く、土や木に触れるといった体験は、自律神経を整え、ストレスホルモンを抑える効果があるとされています。日常生活ではSNSや仕事のプレッシャーで見られている意識が強くなりますが、自然の中に身を置くと、人目を気にせず心を開放しやすくなります。
近年の研究では、土壌中の微生物が精神面や免疫系に良い影響を与えることが報告されています。土壌中のMycobacterium vaccaeというバクテリアには、脳内のセロトニンを増やし、ストレスを軽減する作用があるとされています。土に触れることで免疫バランスが整い、抗ストレス作用が高まるという報告もあります。
小さく始める、五つの段取り
デジタルデトックスは、無理なく少しずつ取り入れることが大切です。まず1日のスマホ使用時間を確認します。次に、食事中や寝る前の1時間など、使わない時間を決めます。慣れてきたら、夕食から朝までデバイスを使わない形が理想で、バッグの中にしまっておくと効果的です。
三つめは、不要なアプリの通知をオフにして、集中できる環境を整えること。四つめは、都会を離れ、静かな場所でデジタルから離れる時間を持つこと。五つめは、読書や体操、芸術や作品づくりなど、デジタルに頼らない趣味を見つけることです。
刺激的な情報は脳内ドーパミンの分泌を促すため、本能的に気になってしまいます。その結果、本当の自分の声が聞こえなくなってしまう。要るのはデバイスを断つことではなく、自分自身に向き合う時間を持つことだと捉えられます。
山を歩いた帰り道に、誰にも報告しないまま満ちている時間があります。写真を撮らなかった景色のほうが、あとまで残っていたりします。見せるために体験する形から、自分が受け取るために体験する形へ。画面から離れる時間が返してくれるのは、その受け取り方です。