質問への答えは、ひとつだけでした
「整体やカイロに行ってもいいですか?」という質問を、診察の場でよく受けます。この質問への答えはたった一つで、「信頼できる、経験豊富な良い治療家の先生を見つけてください」というものです。
答えが一つしかない、というのが、この話のいちばん大事なところだと思っています。行ってよいかどうかではなく、誰にどう受けるかのほうに、確かめる余地が残っています。
そして、その確かめ方を考える材料は、公的機関がすでに公表しています。厚生労働省の通知と、国民生活センターの報告です。どちらも、施術そのものを否定するために出されたものではなく、起こりうることを知ったうえで選ぶための材料になります。
公的機関が集めている、危害の内訳
国民生活センターは、手技による医業類似行為の危害について報告を出しています。部位別に見ると、いくつかの型が挙がっています。
腰部や臀部では、施術中に腰椎を強く押されて翌日から左足に強い痺れを感じ、歩行困難になったケース。首では、神経や脊髄の損傷。特に頚椎に対する急激な回転伸展操作、いわゆるスラスト法は危険性が高いとされています。胸部や背部では、肋骨を骨折したりひびが入ったりするケースが多いと報告されています。
危害の内訳も数字で出ています。神経・脊髄の損傷が全体の21.6パーセント、骨折が9.6パーセント、擦過傷・挫傷・打撲傷が9.5パーセント。1カ月以上の治療を要したケースは18.1パーセントです。
対象にすることが適当でない、とされている状態があります
厚生労働省は、頚椎に対する急激な回転伸展操作を加えるスラスト法について、患者の身体に損傷を加える危険が大きいため、こうした危険の高い行為は禁止する必要がある、と明確に警告しています。
あわせて、徒手調整の手技によって症状を悪化しうる頻度の高い疾患が挙げられています。椎間板ヘルニア、後縦靭帯骨化症、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、骨粗しょう症、環軸椎亜脱臼、不安定脊椎、側彎症、二分脊椎症、脊椎すべり症など。これらは、カイロプラクティック療法の対象とすることが適当でないとされています。
もう一つ、通う期間についての目安も示されています。長期間あるいは頻回の施術で症状が軽減・消失しない場合は、潜在的に器質的疾患を有している可能性があるため、施術を中止して速やかに医療機関において精査を受けることが推奨されています。
自分を大切に、を手順にする
少し難しい内容が続きましたが、要は自分を大切に、ということです。そして自分を大切にするというのは、気持ちの持ち方ではなく、受ける前後の手順のことだと考えています。
受ける前に確かめるのは三つです。施術者の資格や経験。どんな施術方法を使うのか。自分の体調と既往歴が、対象にすることが適当でないとされる状態にあたらないか。受けたあとに確かめるのは一つで、異常を感じたときは速やかに医療機関を受診することがすすめられています。
通っても変わらないときに、回数を増やす方向へ進むのか、いったん止めて調べる方向へ進むのか。ここが分かれ道になります。
施術台に上がる前に、質問を三つ言えるようになります。自分の体の情報を持っているのは、いつでも自分の側です。おまかせしますと預ける形から、確かめてから預ける形へ。自分を大切にするというのは、気持ちの持ち方ではなく、この三つを言い出せる状態を指します。