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スタンフォードでも空気は読まれていました — 読む力と、その誤読

表情や間合いを読む力について、渡米先の診療室で起きたことと、その力が誤作動するときのことを書いています。

公開日:2021年7月15日 / トレーニングの風景

スタンフォードでも、空気は読まれていました

「スタンフォードの先生は空気を読まない?」とよく聞かれます。
いえ、むしろ「めちゃくちゃ」読みます。
ただ、細かく見ると、読もうとしているけれど実際にはうまく読めていない、という印象でした。

そして、努力してでも空気を読めるようになりたいと思っているかというと、そうでもなかったのです。

だから、診療室では、本来なら教授に直接話しかけたいはずなのに、なぜか私の前に列ができました。
「今はいい? ダメ?」。
多忙を極め、ピリピリしている上司に話しかけるタイミングを見計らう若手の姿は、日本でもアメリカでも変わりませんでした。

英語を鍛えて渡米して、それでも半年は泣いて暮らしました

米国スタンフォード大学へ足を踏み入れたのは2016年です。
渡米前には、英語の勉強を徹底的に行いました。
高校3年生で英検準1級を取得。
自宅では日本のテレビを一切見ず、毎日ニューヨークのラジオを流し、独り言が英語で出るレベルまで鍛えました。

これだけやったなら大丈夫だろう。
そう思っていたのですが、それでも惨敗でした。
着いてから約半年間、「泣いて暮らした」と言っても過言ではありません。

理由は「英語の敬語」が分からなかったからです。
敬語が適切に使えなければ、いくら単語や文法が正しくても「礼儀を知らない人」になってしまう。
それでも、待ったなしで業務はやってきます。

手元に残っていたのは、気を遣ってきた年月のほうでした

なんとしてでもチームに溶け込まなければならない。
そんな状況の中で、「私に何ができる?」と自問しました。
しかも今すぐ、チーム全員が認めるほどレベルの高い技術で。

そこで出した答えが、日本人としてデフォルトで身につけている「空気を読む力」でした。
表情や仕草、話し方の変化を敏感に察知する。
「今、話しかけても大丈夫なタイミングかどうか」を瞬時に判断する。

これは、日本で生まれ育ち、多少なりとも上司や年上の方に気を遣ってきた人なら、自然と身についている技だと思います。

同じ力が、不安のほうを読んでしまうことがあります

ただし、「空気を読む力」には落とし穴もあります。
自分のネガティブな思い込みが強い状態で読もうとすると、事実ではなく自分の不安を読んでしまうのです。

本当は機嫌が悪いわけではないのに「怒っているに違いない」と受け取ってしまう。
そんな誤作動が起きやすくなります。
読んでいるものが目の前の相手なのか、自分の中の不安なのか、入れ替わっていることがあります。

スラトレ®では、「ネガティブ感情に振り回されないデフォルト設定」を身につけるトレーニングを行っています。
空気を読む力は素晴らしい資質だけれど、ネガティブな状態だと誤作動する。
だからこそ、自分の思い込みではなく、事実をフラットに見る視点を育てていきます。

いま読み取ったものが事実なのか自分の不安なのか、そこを分けて見られるようになると、相手の機嫌を推し量って過ごす時間が減ります。
減ったぶんは、今日自分が何を話したいかを考えるのに使えます。
人の顔色を先に読んでいた頭が、自分の言い分を組み立てるほうへ働きはじめる。
空気を読む力は、そのとき初めて持ち主の役に立ちます。

※本記事は情報提供を目的としており、医療行為・心理療法ではありません。個人の感想であり、効果を保証するものではありません。