「なぜ、ここまでひどくなるまで放っておいたのか」——病院現場で感じ続けた疑問
医師としてのキャリアは、病気や怪我を負った人が訪れる「病院」勤務からスタートしました。いわゆる、病院にいる「治療」の医師です。
診察室で、すべての患者さんに対し感じてきた思いがあります。
「なぜ、ここまでひどくなるまで放っておいたのか」
口には出せませんが、これは繰り返し感じてきた疑問です。
日本には、体調が悪くなってから病院に行くのが当たり前という文化があります。予防のためにお金をかける、という発想自体がまだ根づいていません。
会社経営で言えば、いわば倒産寸前——予防医学が「最高の節約術」である経済的理由
手術が必要になると、当然費用がかかります。
- 入院費
- 投薬代
- 手術代
- リハビリテーション費
- 通院費
- 移動に伴う交通費
- 休職による収入減
- 家族の介護コスト
治療のために休職するなら、支出を賄うのに十分な収入も減ります。
会社経営で言えば、いわば倒産寸前です。
経営者であれば、この構造はすぐに理解できるはずです。事後対応のコストは、予防投資の何倍もかかる。設備のメンテナンスと同じで、体も壊れてからでは遅いのです。
うどん屋さんへ行って「パスタを作ってくれ」と注文する——治療と予防は「まったく別の分野」である
健康のありがたみを感じて病院を訪れる方はいません。多くの方は、恐怖心や危機感から受診に至ります。
しかし、その受診先は「治療」の医師です。「予防法」を尋ねるのは的外れになります。
治療と予防、健康は全く異なる分野です。例えるなら、うどん屋さんへ行って「パスタを作ってくれ」と注文するくらい滑稽なことです。
それぞれの役割は、こう分かれています。
- 治療医学:病気や怪我を治すことが目的。担い手は病院の医師・外科医
- 予防医学:病気を防ぐ知識を提供することが目的。担い手は産業医・ライフスタイル医学
- 健康増進:「満たされた状態」を維持することが目的。担い手は統合医療・予防専門医
これらは重なる部分もありますが、役割は明確に分かれているのです。
「YES」と答える方に、まだ出会ったことがありません——経営者が「体への投資」を始めるための3つの問い
自分の体を経営資源として見直すために、次の3つの問いに答えてみてください。
問い1:毎朝、自分の骨格に合った専用の体操メニューを持っていますか?
この質問に「YES」と堂々と答える方に、私はまだ出会ったことがありません。ほとんどの方が「汎用的な健康情報」を自己流に試している状態です。
問い2:自分の体の取扱説明書を持っていますか?
車や家電には取扱説明書があります。しかし自分の体の「説明書」——どんな姿勢が負担を生み、どんな運動が自分に合い、どこが弱点か——を持っている方はごく少数です。
問い3:体のコストを「月額」で把握していますか?
健康への支出(ジム、サプリ、マッサージ、医療費)と、健康を損なったときのリスクコスト(休業、治療、機会損失)を比較したことがあるでしょうか。経営判断と同じ視点で、自分の体を見る習慣が重要です。
定期的な点検で異常を早期発見——「壊れる前のメンテナンス」という発想
体も、企業の設備と同じです。
- 定期的な点検で異常を早期発見
- 小さなメンテナンスで大きな故障を防ぐ
- 使用条件に合わせた調整
- ユーザー自身が日常管理できる仕組み
これらはすべて、企業の設備管理で当たり前に行われていることです。なぜ自分の体には適用しないのか——ここが、多くの経営者が陥る落とし穴です。
体と心は、最もROIの高い経営資源
経営者にとって、自分の体と心ほどレバレッジの大きい経営資源はありません。判断の質、エネルギーレベル、リーダーシップ——これらすべてが、自分の心身の状態に依存しています。
健康を「消費」と捉えるか、「投資」と捉えるか。この発想の違いが、長期的には大きな差を生みます。
夏は「年間健康計画」を立てる最適な季節
夏は、1年の折り返し地点。年初の目標を見直し、残り半年でどう自分自身をメンテナンスするかを設計するのに最適な季節です。健診結果があれば、それを「経営資源の現状報告書」として読み解いてみませんか。
体のことだけが、いつも来期送りになっている。健診結果の封筒は、開けたまま机の上に置いてある。ここからは、抜けられます。
抜けたあとは、その健診結果を「経営資源の現状報告書」として読めます。3つの問いに、その紙の余白へその場で答えを書き込めます。
そのうち、来期の予算を組む会議のあとで、自分の体のメンテナンスが同じ紙の上に項目として並びます。