この1年、体にいくら使ったか、数えたこともありません。
皆さんこんにちは、Dr.EKO博士です。
毎日をキラッキラに生きるThrive(スライブ)のためのトレーニング、スラトレ®を運営しています。
さて、12月は、1年間に体へ使ったお金を数える絶好のタイミングです。
症状が出てから、壊れてから、動けなくなってから——医療費の「上流」と「下流」
日本の医療費は、年間約45兆円(令和5年度)に達しています。
この巨額な支出の大半は「病気になってから」の対処に使われています。
- 手術費用
- 入院費用
- 長期の投薬
- リハビリテーション費用
- 介護関連費用
これらは全て「下流の対処」です。
症状が出てから、壊れてから、動けなくなってから——問題が顕在化した後の医療です。
一方で、「上流の予防」への投資は極めて少ないのが現状です。
肩こり・腰痛が25年以上1位・2位——運動器障害が医療費に占める重さ
2019年のデータによると、世界中で約17億1000万人が運動器障害を抱えており、障害調整生命年(DALY)の17%を占める世界的な問題です。
日本では特に深刻で、肩こり・腰痛は国民の不調の1位・2位を25年以上にわたって占め続けています。
関連する医療費は年間数兆円規模と推定されます。
主な運動器関連の医療コストは、次のとおりです。
- 整形外科の外来診療費
- 物理療法・リハビリ費用
- 腰椎・膝関節の手術費用
- 骨粗鬆症関連の薬剤費
- 転倒による骨折の治療費
- 介護保険の支出(要支援・要介護者の多くが運動器疾患)
これらの多くは、適切な予防で相当部分が回避可能です。
定期的なメンテナンスをせず、壊れてから修理すると——予防投資のROI
経営者の方であれば、この数字の意味がすぐに分かるはずです。
工場の設備を考えてみてください。
定期的なメンテナンスをせず、壊れてから修理すると、次のことが起きます。
- 修理費用が何倍にもなる
- ダウンタイムで生産が止まる
- 連鎖的な故障を引き起こす
- 長期的な寿命が短くなる
逆に、定期的なメンテナンスに投資すれば、トータルコストは大幅に下がります。
人体の運動器も全く同じです。
予防と治療のコストを概算で比較すると、こうなります。
| 介入タイプ | 年間コスト(個人) | 結果 |
|---|---|---|
| 予防(運動・姿勢・教育) | 数万円程度 | 運動器障害の発症抑制 |
| 初期治療(通院・薬) | 10万〜30万円 | 症状の軽減 |
| 手術+リハビリ | 100万円〜 | 機能の部分回復 |
| 介護が必要な状態 | 年間数百万円 | QOL大幅低下 |
上流での投資ほど、同じ金額で得られる健康価値が桁違いに高いのです。
診療報酬は「病気を治すこと」に設計されている——なぜ日本では予防医療が広がらないのか
海外と比較すると、日本の予防医療への意識は遅れています。
その構造的な理由は次の通り。
1つめは、保険制度の設計です。
日本の国民皆保険は素晴らしい制度ですが、「病気を治すこと」に診療報酬が設計されています。
予防的な運動指導や生活指導には保険点数がつきにくく、医師が予防に時間を割くインセンティブが弱い構造です。
2つめは、PM&Rという診療科の不在です。
欧米ではPM&R(Physical Medicine & Rehabilitation)という、運動器の回復と予防を総合的に監督する診療科が確立されています。
しかし日本にはこれに相当する診療科が存在せず、運動器の予防医療を体系的に担う専門家がいないのが現状です。
国と地域ごとに並べると、こうなります。
- アメリカ:ABPMR認定で専門医制度が確立。独立した主要専門科として位置づけられ、入院リハビリ施設(IRF)が整備され、保険制度と連動している
- イギリス・欧州:UEMS基準で確立。NHS内に独立した専門科があり、重症後リハビリと予防を体系的に担う
- 韓国・中国:整備・拡充中。国家戦略として制度整備が進み、急速な高齢化を背景に強化されている
- 日本:相当する診療科が不在。整形外科・リハビリ科に分散し、予防を体系的に担う専門家が不足。制度的な遅れが課題
3つめは、文化的背景です。
「健康にお金をかける」という文化が薄く、「体調が悪くなってから病院に行く」のが当たり前とされています。
予防への自己投資は「贅沢」と見なされがちです。
制度が変わるのを待つ必要はありません——個人レベルでの予防投資の始め方
制度が変わるのを待つ必要はありません。
個人レベルで予防投資を始めることができます。
1つめは、毎日の姿勢と動作の点検です。
長時間の座位、偏った動作、不適切な寝具——日常の積み重ねが運動器障害の最大要因です。
1日5分でも姿勢と動作を意識する習慣が、大きな差を生みます。
2つめは、予防的な運動の日常化です。
ジムに通わなくても、自宅でできる運動で十分です。
継続できる強度で毎日動かすことが重要。
週1回の激しい運動より、毎日10分の適度な運動の方が予防効果が高いと考えられます。
3つめは、信頼できる相談相手を持つことです。
整形外科医、理学療法士、トレーナーなど、予防的視点を持った専門家に定期的に相談できる関係性を築く。
不調が出てから探すのではなく、元気なうちから繋がりを作っておくのがポイントです。
4つめは、健診結果を「予防計画」に変換することです。
健診結果は、単なる数値の通知表ではなく「現状の経営資源報告書」です。
数値から将来のリスクを予測し、予防アクションに変換する習慣が、最も経済的な自己投資になります。
12月は、1年の医療コストを振り返る絶好のタイミング——年末の振り返りに
12月は、1年の医療コストを振り返る絶好のタイミングです。
- 通院費・薬代・検査費の合計
- マッサージ・整体・整骨院の支出
- サプリメント・健康食品の支出
- ジム・フィットネスの支出
- 健康関連の時間コスト(通院時間など)
これらの合計と、来年の予防投資計画を比較してみてください。
「予防」に投じる数万円が、「治療」に投じる数十万円を節約する——この視点を持つことが、経営者にとって最もレバレッジの大きい投資判断の一つです。
健診のあとに何をすべきか——その答えは、「異常値を心配する」ではなく「予防資産を積み上げる」にシフトすべきです。
年末の今こそ、来年の健康投資計画を立てる最適なタイミングです。
去年と同じ12月でも、通院費と整体とサプリメントの合計が、金額として1枚の紙に出ています。
来年の予算表に、体の欄が最初のほうに入ります。
翌年の12月に同じ紙を作ると、比べる相手が去年の自分になります。
数万円をどちらの段に置いたかが、そのまま並んで見えます。
