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世界の三十カ国以上にあって、日本にない診療科の話

体を動かす部位の回復を、最初から最後まで一人で監督する医師の専門領域が、日本には置かれていません。

公開日:2025年11月9日 / からだのこと

体の回復を、最初から最後まで監督する医師

PM&Rという名前の専門領域があります。Physical Medicine and Rehabilitation の略で、体の回復とリハビリテーションを総合的に監督する医師の専門領域を指します。米国で確立されたもので、四年から五年の専門研修プログラムを経て専門医になります。

特徴は三つに集約されます。

ひとつ、運動器の不調に対する保存療法に特化した訓練を受けていること。手術以外のあらゆる治療法、つまり運動療法、徒手療法、薬物療法、物理療法を、統合的に扱えるように訓練されます。

ふたつ、診断から治療まで一貫して行うこと。診断する医師と治療を指示する医師が別れている分断モデルとは異なり、一人の医師が最初から最後まで責任を持ちます。

みっつ、非手術的なアプローチを中心とした包括的な治療であること。手術をするかしないかの二択ではなく、手術を避けながら最大限の機能回復を目指す形です。

どこまで広がっているか

北米では、カナダが米国と同様の制度を採用しています。運動器障害とリハビリテーションの領域で、PM&R専門医が中心的な役割を果たしています。

ヨーロッパでは、PRM(Physical and Rehabilitation Medicine)という名前で三十カ国以上で実践されています。フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、オランダ、ベルギー、スイスなどが挙がります。これらの国では、専門医が運動器障害、脳卒中後のリハビリ、脊髄損傷、スポーツ医学など、幅広い領域をカバーしています。

アジアでは、台湾と韓国で発展が進んでいます。特に台湾は専門医の養成に力を入れており、アジア地域で先行しています。韓国も制度整備が続いています。

高齢化が進む社会で運動器の医療が重要になる、という認識は、世界で共通のものになりつつあります。

日本では、誰が組み合わせを決めているか

日本には、これに相当する診療科が存在しません。制度の違いにとどまらず、通う側の体験に直接影響しています。

運動器に不調を抱えた方は、次のような選択肢を自分で組み合わせることを求められます。整形外科、整骨院、整体やカイロプラクティック、医師の指示のもとで行われるリハビリ施設、鍼灸院やマッサージ院、フィットネスジムやパーソナルトレーナー。

どれを、いつ、どの順番で、どう組み合わせるか。この判断を、医学的な知識を持たない本人が行うことになります。結果として起きているのは、肩こりと腰痛が二十五年以上にわたって同じ位置に置かれ続けていること、施術による事故や怪我の報告が続いていること、慢性化して生活の質が下がる方が多いこと、医療費が有効に使われないこと、そして良くなったり戻ったりを繰り返すことです。

制度の空白は、なぜ埋まらないのか

理由は四つ挙げられます。ひとつ、既存の診療科が運動器医療の一部をそれぞれ担っているため、新しい診療科を設ける動機が制度的に弱いこと。ふたつ、保険点数の設計が病気を治す医療に寄っているため、予防や統合的なアプローチが評価されにくいこと。みっつ、医学教育の専門特化が進み、横断的に統合する土台が弱いこと。よっつ、こういう医療があるべきだという声が、利用する側からあまり上がらないこと。

日本の医療制度には、世界に誇れる強みもあります。国民皆保険による公平なアクセス、高い手術技術と診断精度、医師の勤勉さと患者への献身、診療所から大学病院までの層の厚さ。これらを否定する話ではありません。治す医療が強い一方で、整える医療と守る医療が制度の中に位置づけられていない、という偏りの話です。

個人の側に置けるのは、この空白を認識し、自分で補う姿勢です。点検の項目も挙げておきます。この一年で運動器の状態はどう変わったか。通っている施設は自分に合っているか。全体をまとめて管理してくれる相手はいるか。これから先に向けて、運動器の組み立てをどうするか。

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※本記事は情報提供を目的としており、医療行為・心理療法ではありません。個人の感想であり、効果を保証するものではありません。