どれか一つでは足りない課題が増えています
病院、整骨院、ジム、カウンセリング。それぞれの専門家を、それぞれ別個に利用していないでしょうか。現代の健康課題は、単一の専門家では扱いきれない複雑さを持つようになりました。
腰痛は、筋力と姿勢とストレスと生活習慣が絡む複合の問題です。不眠は、体と心と環境と思考の複合。慢性の疲労は、栄養と運動と睡眠とメンタルの複合。整形外科だけ、カウンセリングだけ、ジムだけでは対処しきれない場面が多くなります。
参考になるのが、欧米のトップクラスのプロチームです。一人の選手に対して、PM&R医師、整形外科医、理学療法士、ストレングスコーチ、栄養士、スポーツ心理専門家、睡眠専門家がつきます。これだけの専門家が一人の情報を共有し、統合的に見ていきます。心の力を借りることの重要性は、この世界ではすでに常識になっています。
情報がつながらないと、調整役は本人に回ります
一方、日本の現場では別のことが起きています。整形外科の診断結果が整骨院に伝わらない。カウンセラーが体の症状を知らない。ジムのトレーナーが既往症を把握していない。医師同士でさえ、他院の処方を把握していないことがあります。
その結果、各専門家のあいだを行き来して情報を伝える役割が、本人に回ってきます。医学的な知識を持たない立場で、伝えるべき内容の取捨選択をすることになるので、負担は小さくありません。
もう一つ、押さえておきたい前提があります。現代の健康管理で最も大事なのは、心と体を分けて扱わないことです。体を鍛える、体を治す、体を整える。この三つに加えて、早く良くなりたい、復帰したい、向上したいという願いを支える心のケアが欠かせません。心身を統合して見る考え方は、競技者に限らず、経営者にも医療職にも、日々働く人にも当てはまります。
主治医を一人決めて、そこへ集める
組み直しの手順は、五つに分けられます。
一つめ、全体を把握してくれるハブとなる医師を一人決めること。かかりつけ医、統合医療に理解のある医師、予防医学の医師などが候補になります。他の専門家の情報は、この主治医に集約します。
二つめ、新しい専門家にかかるとき、他で何をしているかを必ず伝えること。通っている他の医療機関、服用中の薬(市販薬やサプリを含む)、受けている施術、運動の習慣、心のケア。この五項目を毎回伝える習慣にします。
三つめ、情報共有の仕組みを自分で作ること。日本には統一的な医療情報の共有システムがないので、健康管理ノートを紙かアプリで用意し、訪問のたびに持参します。四つめ、専門家同士の連絡許可を自分から出すこと。日本の医療では、本人の明示的な許可があれば連携できる場合が多くあります。五つめ、三か月ごとにチーム全体を見直すこと。成果が出ているか、抜けがないか、重複がないか、惰性で通い続けていないかを点検します。
自分のチームを、書き出してみる
節目のタイミングは、チームを再設計する好機になります。次の問いに答えてみると、いまの構成が見えてきます。今のチームに全体を見る人はいるか。各専門家のあいだで情報が共有されているか。惰性で通い続けている場所はないか。足りていない専門領域はないか。今年とくに強くしたいテーマに合う専門家はいるか。
健康は、一人の専門家にお任せするものではなく、自分を中心としたチームで組み上げるものです。まずは、いま関わっている人を紙に書き出すところからになります。この中で全体を俯瞰する人を一人持てているかどうかが、チーム全体の成果を左右します。
なお、症状があるときは、かかりつけ医または専門医への相談が先です。この記事は考え方の整理であって、診断の代わりにはなりません。
紙に書き出した名前を見て、足す人と外す人がその場で決まります。全体を見る役が空いていることに、自分で気づけます。良さそうな場所を増やしていく形から、役割で組んで人を選ぶ形へ。チームの中心にいるのは、いつも診てもらう側ではなく、組んでいる側です。