圧は、下へ渡っていきます
医療や介護、リハビリといった国家資格職の多くは、やりがいと使命感に突き動かされながら、日々の職場では理不尽な圧力と隣り合わせにあります。
その背後にあるのが、「無意識のネガティブの再演」「恐怖の連鎖」と呼んでいる心のしくみです。一言で言うと、「恐怖政治で上司に圧をかけられたから、自分も同僚や部下に同じように恐怖の圧をかける。」という形になります。
現場の光景で言えばこうです。業務量は年々増えるのに、人手は常にギリギリ。少しのミスで上司から強く詰められる。そして「自分が新人の頃はもっと厳しかった」と、下の世代にも同じように圧をかけてしまう。自分が受けた痛みや抑圧を、無意識のうちに他者へと転写してしまうわけです。この負のループは、気づかない限り、ずっと続きます。
圧の出どころは、経営の側にあります
なぜ医療現場がこの構造にはまりやすいのか。ここには構造的な事情があります。
日本全国の医療施設の7割以上が赤字運営だと言われています。そして人件費が経費の大半を占めるため、まず削られるのは人になります。結果として、常に少ない人数で過剰な業務をこなす現場ができあがります。
つまり、経営側の焦りが、現場にそのまま圧力として降りかかる。怒鳴られる、詰められる、押し付けられるという状態が、日常になっていきます。上流の数字から降りてきた圧が、順番に手渡されている形です。
これは医療や介護に限った話でもありません。ホテルスタッフ、飲食店、教育現場など、「人と直接関わる」すべての職業で、同じような圧力の構造が起きています。理由は同じく人件費です。人件費が経費の大半を占める現場では、人を削ることが最も手っ取り早い対策とされやすく、結果的に現場に無理が強いられ、しわ寄せがいきやすくなります。真面目で一生懸命な人ほど、その中で心や体をすり減らしてしまう傾向があります。
最も深刻なのは、麻痺という段階です
そして最も深刻なのは、この状態があまりに当たり前になりすぎて、「おかしい」と思う感覚すら麻痺してしまうことです。
麻痺した状態は、いずれ心の不調や身体症状として現れます。毎朝、職場に行こうとすると吐き気がする。食欲がわかない、夜中に目が覚める。ミスを極端に恐れて、緊張状態が続いている。常に頭痛や肩こり、腰痛がある。「自分が悪い」「だれかが悪い」と思い込んで離れられない。
ここで一つ、押さえておきたいことがあります。内面の声を丁寧に棚卸しして、心と体をどれだけ整えたとしても、元の環境に毎日戻るのであれば、ネガティブはまた追加されていきます。連鎖の機序が職場の側にある以上、内側だけを整えても、入ってくる量は変わらないからです。
自分を守ることは、逃げではありません
まずは、自分を守ること。それは「逃げ」ではなく、成熟した選択です。心と体を壊してまで社会に貢献する形にしなくても、自分に合った方法で、自分を大切にしながら、まるで自分のように誰かを大切にする社会貢献を続けることはできます。
いまの職場で違和感があるとしたら、それは心が送っている変化のサインかもしれません。その小さな声に、そっと耳を傾けたいところです。
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