同じ一文から、別の結論が出ます
彼が電話に出ない。
この一文だけを何人かに渡すと、返ってくる読み方が分かれます。
嫌われたのかもしれない、と読む人がいます。
忙しいのだろう、と読む人がいます。
運転中かもしれない、と読む人がいます。
起きた出来事は同じで、渡した一文も同じです。
面白いのは、どの人も自分の読み方を推測だと思っていないことです。
嫌われたと読んだ人にとって、それは考えた末の解釈ではなく、その場で分かったことになっています。
分かれているのは、出来事ではありません
分かれているのは、その人が持っている読み方のほうです。
この読み方を、スラトレ®では固定概念と呼んでいます。
同じ出来事から、ちがう一日が始まる
- ① 出来事
- 約束が、直前でなくなった。起きたことは、選べない。
- ② 解釈
- 「嫌われたに違いない」/「自由な時間ができた」。ここだけ、自分で選べる。
- ③ 感情
- 悲しみ・怒り/ほっとする。②に続いて、あとからついてくる。
- ④ 行動
- もう、その人を誘わなくなる/前から読みたかった本を開く。
事実に意味づけをするのが「認知」です。①と②のあいだで向きが決まり、③と④はそのあとを追いかけます。研究では、①から②へ移るところで歪みを直すのが、いちばん効くとされています。(認知療法 アーロン・ベック)
固定概念は、その場で作られるものではありません。
30年から40年かけて、学校や家庭や職場で身についてきた、受け取り方の癖です。
長く使ってきたぶん、本人には読み方ではなく事実に見えます。
癖そのものは、悪いものではありません。
毎回ゼロから考えていたら、日常は回らないからです。
速く決めるための省略として、役に立っています。
困るのは、省略が効かない場面でも同じ省略が出るときだけです。
見つける方法は、並べることです
自分の癖は、自分の中だけを見ていても出てきません。
事実に見えているものを、自分で疑うのは難しいからです。
出てくるのは、別の読み方と並べたときです。
彼が電話に出ない、に対して自分が最初に思ったこと。
それを、他の三つの読み方の横に置いてみる。
並んだ瞬間に、自分のものが四つのうちの一つに変わります。
並べる相手は、実在の人でなくてかまいません。
何を言っても認めてくれる人がいたらどう読むか、と想像して一行足すだけでも、並びは作れます。
紙の上でなら、その人は何人でも呼べます。
一つになると、選び直せます
事実だったものが選択肢の一つに変わると、そこから先が変わります。
今日、返信が来ないとき、最初に浮かんだ読み方の横に、もう一つ書き足せるようになります。
書き足せる人は、返信を待つ時間の過ごし方が違います。
同じ待ち時間で、別の仕事が一つ進みます。
変わるのは、待ち時間だけではありません。
実際に返信が来たときの一行目も変わります。
責める言葉から入るか、用件から入るか。
ここは、待っているあいだに何を握っていたかで決まります。
相手には、こちらが何を考えていたかは見えません。
見えるのは、届いた一行だけです。
その一行が変わると、返ってくるものも変わっていきます。
読み方を書き足せるようになると、相手の反応でその日の機嫌が決まらなくなります。
返信の有無に預けていた主導権が、手元に戻る。
相手を動かすために使っていた時間は、自分の用件を進める時間になります。