私たちは、人に尽くす力の上に立っています
対人援助や医療の仕事は、人に尽くす力の上に成り立っています。私はその専門性と倫理観を、ずっと守りたいと思ってきました。
ただ、その力に対価を付けることについては、長いあいだ別の考えが一緒に置かれてきました。人のために尽くすことは、無償か低賃金であるべきだ、という考えです。
この考えは、もはや時代遅れではないでしょうか。
「善意の搾取」と、私は言ってしまいます
私たち対人医療職は、長年そう言える状況に置かれてきました。恐れながら、そう言ってしまっても過言はないと思います。
深夜まで続く業務。休日返上の対応。心身の疲弊。低賃金。そして、限られたキャリアの選択肢。
五つは別々の困りごとに見えますが、一つづきです。そしてこの五つの上に、人のために尽くすことは無償か低賃金であるべきだ、という考えが乗っています。
尽くすことと稼ぐことが切り離される場面を、家庭のお金の話から見ている動画があります。
動画・2分13秒
倫理的な行動にこそ、経済的価値が伴うべきです
倫理資本主義とは、倫理的な行動にこそ経済的価値が伴うべきだ、という考え方です。これは決して矛盾ではありません。
適切な対価があってこそ、質の高い支援ができます。経済的な余裕が、より創造的な支援を生みます。そして支援する側自身の成長への投資が、ご利用者様への還元につながります。
この三つは並列ではありません。対価から始まって、支援へ戻ってきます。対価は受け取って終わるものではなく、次にまた戻ってくるものです。
いま申し上げているのには、理由があります。従来の支援体制では対応しきれない問題が増えました。専門性への適正な評価が、求められるようになりました。社会貢献と経済的成功の両立も、以前より理解されるようになりました。
棚卸しが先で、値付けは後です
実践は三つに分かれます。
一つめは、自分の価値を再定義すること。専門知識と技能の棚卸し、提供できる価値をはっきりさせること、経験に基づく独自の強みを見つけること。二つめが、適切な対価の設定です。専門性に見合った報酬の設計、価値をもとにした料金の体系、続けられる事業の形をつくること。三つめが、価値提供の最大化です。オンラインを使った効率化、繰り返し使える形の開発、学びと成長を続けること。
値を決める作業は、一つめのあとです。棚卸しが先で、値付けが後。
動き方も三段です。一段めは、まず小さく始める段。現職を維持しながらの副業、オンラインでの小規模な実践、得意分野での試験的な展開。二段めが段階的な移行で、実績と反応の蓄積、同じ志を持つ仲間との関係づくり、事業の形の検証と改善。三段めが拡大と確立で、サービスの体系化、体制づくり、続けられる運営の形です。
三段の起点に、現職を辞める作業は置いていません。
見積書に自分の額を書き込むとき、指が止まらなくなります。尽くす気持ちと値段を、別々の引き出しに入れておかずに済むからです。後ろめたさを抱えて安く出す癖が、そこで抜けます。