「多すぎて決められない」と言われます
選べない理由として、まず挙がるのが数です。情報が多い、道が多い、比べるものが多い。だから決まらない、という説明です。
たしかに、調べれば調べるほど遠ざかっていく感覚はあります。本を読む、人に聞く、検索する。材料は増えるのに、これだ、と思えるものが出てこない。むしろ疲れが増える。
数を減らしても、決まらないことがあります
ただ、この説明には合わない場面があります。
選択肢が二つしかないのに決まらない。あるいは、一つに絞ってもらったのに、それでも動けない。数が原因なら、減らせば決まるはずです。減らしても決まらないなら、詰まっているのは別のところにあります。
散らかった部屋に荷物を足していく状況に近いかもしれません。荷物の数だけの問題ではなく、どこに何を置くかが決まっていない。そこに足しているので、増えるほど分からなくなります。
足りていないのは、数ではなく基準です
比べるという作業は、ものさしがあって初めて成り立ちます。速いほうがいいのか、続けやすいほうがいいのか、後で戻せるほうがいいのか。ものさしが決まっていれば、材料が多くても順番はつきます。
料理を選ぶときに、今日は軽いものにする、と先に決まっていれば、品数が何十あっても手は止まりません。決まっていなければ、三つでも止まります。差をつくっているのは、並んでいる数のほうではありません。
反対に、ものさしが決まっていないと、材料はただ並ぶだけです。並んだものを何度も見比べているうちに、時間だけが過ぎていきます。
そして、ものさしがぼやける時期があります。眠れていない、予定が詰まっている、誰かの言葉が残っている。そうしたときには、自分が何を大事にしているのかが手元から離れやすくなります。
このとき起きているのは、判断力が落ちることではありません。判断の材料は同じだけあるのに、優先の順番だけが決められなくなる。だから、いくら情報を足しても解けません。足りないものが情報ではないからです。
基準は、あとから言葉にできます
はじめから持っている必要はありません。自分がこれまで何を選んできたのか、そのとき何が決め手だったのかを書き出すと、輪郭が出てくることがあります。
過去に決められた場面を三つ思い出して、共通しているものを探す。速さだったのか、後戻りできることだったのか、誰と組むかだったのか。そこに出てきたものが、いまのものさしに近いことがあります。
選ぶ力を上げるというより、選ぶ前の状態を整える。順番としては、そちらが先に来ます。
ここまでが、決められない理由の話です。ただ、基準が言葉になったあとにも、まだ残るものがあります。決めたのに揺り戻すこと。人に説明できる基準と、実際に自分を動かしている基準がずれていること。
基準を持っていても決まらないとき、何が起きているのか。これは基準の作り方とは別の問いです。
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