増えるほど、言いにくくなります
オンラインサロンやコミュニティを運営されているリーダーの方から、相談を受ける機会が増えています。企業経営者とはまた違う形で、負荷が蓄積している方が少なくありません。
共通しているのは、最終責任者として意思決定の重みを一人で背負っていることです。決定的に違うのは、メンバーとの関係性のほうです。サロン運営者にとってのメンバーは、従業員ではなく、慕って集まってくれた人たちです。この関係性が、弱音を吐けない構造を作ります。
企業経営者には、少なくとも経営者仲間に愚痴を言える場があります。一方、サロン運営者が最近しんどいと発信すれば、メンバーが離れるかもしれない、コミュニティの空気が揺らぐかもしれない、と感じてしまう。結果として、企業経営者以上に、どこにも弱音を吐けない状態に追い込まれることがあります。
臨床の場でよくうかがうのは、次のような声です。私が発信することを信じて集まってくれている人がいる、だから弱っている姿は見せられない。一人でも動揺させたら、コミュニティ全体に伝播する気がする。リーダーが揺らいだら、誰も守られない気がしてしまう。
これは、真面目で誠実な方ほど強く感じる構造です。弱さではなく、責任感の裏返しと言えます。ただ、人間の思考と身体は、弱音を吐かないという状態を長期間続けられるようには設計されていません。どこかで、蓋をした分の負荷が別の形で出てきます。
先に出るのは、身体のほうです
相談に来られるサロン運営者やコミュニティリーダーの方々に、共通して見られる身体の変化が三つあります。
一つめは、体重が増えて戻せないことです。以前と同じ食事量、同じ運動量のはずなのに、数キロ増えたまま戻らない。食事制限をしても下がりにくい。
二つめは、朝の浮腫が何日も引かないことです。以前は一晩眠れば取れていたむくみが、午後になっても残る。顔にも手足にも出ることがあります。
三つめは、何かへの依存の強度が上がることです。甘いもの、アルコール、SNS、買い物、ゲーム、海外旅行、高い支出の継続。これまでの自分ならほどほどで止められたものが、止まりにくくなる。
いずれも、思考の使い方の負荷が、身体の恒常性の限界を超えはじめたサインと捉えるべき変化です。病気ではありません。ただ、放置すれば判断力や対人関係、そして身体の健康に波及する可能性があります。
なぜ、身体の側が先なのか
メンタルの専門家は精神科医だと思われるかもしれません。ただ、臨床の現場で何度も経験してきたのは、身体の不調の背景に、思考の癖や感情の扱い方の問題が隠れているケースが少なくない、ということでした。
肩こり、腰痛、慢性的な疲労感、体重変動、浮腫、依存傾向。こうした身体の症状が、メンタルの状態と関係している場合があるとされています。リーダー職の方は、メンタルが弱っているのかもしれないと自覚する前に、こうした身体のサインに気づくほうが先になることがほとんどです。
逆に言えば、身体のサインに早めに気づければ、メンタルの状態を整える手を、手遅れになる前に打てます。健診結果で異常なしだったとしても、自身の身体感覚の変化に敏感であってほしい理由は、ここにあります。
書き留めるところから始まります
臨床の現場でお伝えしている第一歩は、三つです。
一つめ、身体のサインを気のせいにしないで、書き留めること。週末だけでも、体重、浮腫、依存傾向のうち気になるものを書き留めてみる。三、四週間分たまると、自分の状態の波が見えてきます。
二つめ、弱音を吐く相手を、コミュニティの外に用意すること。メンバーや家族ではない、利害関係のない相手です。友人、産業医、医療者、コーチなど。月に一度でも話す場を持つ形になります。
三つめ、思考の使い方そのものをトレーニングの対象にすること。弱音を吐かないまま走り続けるという思考の癖は、自然には変わりません。意図的に、別の思考の使い方を練習することになります。
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