増やせないものと、増やせるもの
骨密度は三十歳前後でピークを迎え、その後は自然に減っていきます。この減少を完全に止めることはできません。
一方で筋肉は、適切な刺激さえあれば、性別や年齢に関係なく強くできます。八十代から筋力トレーニングを始めて筋肉量を増やした報告も、数多くあります。加齢とともに筋肉が減っていく状態はサルコペニアと呼ばれますが、歳のせいだから打つ手がない、という話にはなりません。
そして、筋肉を強くすることは、骨を守ることにもつながります。筋肉からはマイオカインと呼ばれる物質が出ていて、近年注目されています。骨や血管の状態を守る働きに関わるとされ、糖の代謝との関わりも指摘されています。コラーゲンの産生に関わるという報告や、認知機能によい影響を与える可能性を示した報告もあります。いずれも、そうした働きがあるとされている、という段階の話です。
骨の側を支える四つの柱
骨密度は、内臓と同じように鍛えることはできません。ただ、維持するための方法のほうは確立されています。
一つは、有酸素運動と筋力トレーニングの組み合わせです。荷重をかける運動が、骨への刺激になります。
二つめは、カルシウムやビタミンDなどの栄養補給。食事と日光浴の組み合わせで整えます。
三つめは、必要に応じた薬物療法。これは医師の判断のもとで行われます。
四つめは、定期的な骨密度の測定です。DEXA法という方法で評価します。
この四つを組み合わせることで、加齢による骨密度の減少を緩やかにすることが期待できます。
「運動しなさい」と言われたあとで
整形外科の外来でよく聞くのは、健診で運動をすすめられてジムに行ったら、怪我をしてしまった、という声です。
運動による怪我は、大きく二つに分かれます。ひとつは、大きな衝撃による急なもの。骨折、靭帯の断裂、転倒による打撲です。もうひとつは、小さな負担が積み重なっていくもの。腱鞘炎、慢性の痛み、関節の違和感、筋膜性の痛みなどです。
多いのは後者で、三十代から五十代に目立ちます。気持ちはまだ動きたい、けれど体には変化が出てきている世代です。若い頃のイメージのままジムに行くと、知らないうちに負担が溜まっていきます。
続けられる形のほうから決める
体の特性に合わせて運動を続けるための鍵は、三つあります。
一つめは、可動域です。三十代以降、関節の動く範囲は知らぬ間に狭くなります。広げる動きを日常に組み込んでおくと、怪我を防ぐ側に働きます。
二つめは、角度です。同じスクワットでも、膝の位置や足幅によって負担は大きく変わります。自分の骨格にとって無理のない角度で動くことが、慢性の障害を避けることにつながります。
三つめは、強度です。週に一回の激しい運動より、毎日十分の適度な運動のほうが、怪我のリスクが低く、効果も続きます。続けられる強度であることが、いちばん重要です。
始める前に整理しておくとよいものもあります。過去の怪我や手術の記録。いま痛みがある部位。関節の可動域に左右差がないか。運動の経験と、いまの体力の差。そして、低い強度から始められる環境を選べているかどうか。
怪我なく毎日続けられる十分のほうが、気合いで一時間やる週一回よりも効きます。
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