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丁寧に診たいのに、丁寧に診られない構造

医療スタッフの疲弊の背景には、国が値段を決める診療報酬という制度の仕組みがあります。

公開日:2025年4月8日 / からだのこと

「先生、大丈夫ですか」と聞かれる側のこと

「先生、大丈夫ですか」「看護師さん、ずっと動きっぱなしですね」。患者さんからこうした声をいただくことが増えました。実際、医療スタッフの多くが、限界の一歩手前で働いています。

もっと丁寧に診療がしたい。一人ひとりの患者さんに向き合いたい。大切な命にちゃんと時間を使いたい。そう願いながら、それができない。この疲弊の背景には、国が決める診療報酬制度と、それに起因する過労の実態があります。

医療は、国が値段を決める世界

医師が行う診療には、すべて「診療報酬」と呼ばれる定価がついています。整形外科の一例では、関節腔内注射が80点、つまり800円。トリガーポイント注射も80点で、複数部位でも1日1回のみ。リハビリ1回20分で最大185点、1,850円です。

この点数は年々引き下げられていて、それが医療機関の収入減や倒産に直結しています。2010年から2022年への推移を見ると、骨折非観血的整復術(四肢)は1,000点から850点へ15%減。骨折観血的手術(四肢)は3,000点から2,700点へ10%減。関節腔内注射は100点から80点へ20%減。トリガーポイント注射(1部位)も100点から80点へ20%減。MRI撮影(四肢)は1,500点から1,350点へ10%減。運動器リハビリテーション(Ⅰ)(1単位20分)は205点から185点へ約10%減。なお、これらは厚生労働省の診療報酬改定資料(2010〜2022年)に基づく参考値で、施設基準や加算により変動する場合があります。

単価が下がると、診療時間が削られる

かつて1,000円で評価されていた医療行為が100円になったとしたら、医療機関はどうやって経営を維持すればよいのでしょうか。答えは一つしかありません。1人の患者に10分かけていた診療を、1分で「さばく」しかなくなる。質を落とすか、数をこなすか、という究極の選択です。

医師も、看護師も、リハビリスタッフも、まるで流れ作業の一部のように動き続けなければならない。予約で埋まった時間を、一秒も無駄にできない。厚生労働省の2023年の調査によると、勤務医の約40%が過労死ライン(年間960時間超)を超えて働いており、約10%がその2倍の1,860時間超、1.6%は3倍の2,880時間超に達します。国内の調査では、医師の20〜50%がバーンアウト症状を経験しているとされています。

医学部の卒業式で、仲間たちは「良い医者になりたい」「誰かの力になりたい」「目の前の命を助けたい」と語っていました。誰も、馬車馬のように働くことを夢見てはいませんでした。でも今、現場には理想を貫く余地がないのです。

望んでいるのは、給与ではなく丁寧な診療

私たちは「もっと給料を上げてくれ」と言いたいのではありません。共に働くスタッフは、従業員ではなく「同士」です。家族以上、でもそれとは少し違う。「人を良くする」ことに全力で向き合い、ときに自分の健康や時間を犠牲にしながら共に歩んできた仲間を、時給いくらの労働力として見ることはできません。そういう想いと信念が、日本の医療の質を支えています。日本の医療は世界一です。日本の医療人も、間違いなく世界一なのです。

医療とは本来、人と人が向き合う営みです。しかし今、その価値が「点数」や「効率」でしか評価されない時代に入っています。本当に大切な医療、本当に必要なケアが、収益性が低いという理由で隅に追いやられていく。その影響は、いずれ私たち自身の身に返ってくるかもしれません。

だからこそ、「体調を崩してから病院へ行く」のではなく、「崩れる前から支えてくれる存在」に出会っておくこと。それが、これからの医療との向き合い方なのかもしれません。日々の暮らしの中で自分の健康を育てていく視点が、これからの時代を安心して生き抜く土台になります。

スラトレ®は、自分の才能を、自分で扱えるようになるためのメンタル思考トレーニングです。いまの才能タイプと思考のクセが六角形で出る、30の質問を置いています。

※本記事は情報提供を目的としており、医療行為・心理療法ではありません。個人の感想であり、効果を保証するものではありません。