動いたあと、筋肉そのものからも何かが出ています
EKOフィジカルというプログラムは、体がもともと持っている働きを最大限に活かすことを重視していて、五つの要素を軸に組み立てられています。一つ目が、筋肉から出るものです。
体を動かすと、筋肉からタンパク質やペプチドが出ます。これらをまとめてマイオカインといいます。筋肉の中だけで働くのではなく、体じゅうに向かって届くため、運動ホルモンと呼ばれることもあります。代謝の調整や体重の管理、インスリンの効きやすさ、炎症を抑える側に関わるとされ、骨格筋を分泌する器官として捉え直した2012年の総説にまとめられています。ペダーセンとフェブライオによる、内分泌の分野の総説誌に載ったものです。
代表的なものとして三つが挙げられています。IL-6は炎症を抑える側と糖の代謝の調整に、BDNFは脳の働きと神経を守る側に、Irisinは褐色脂肪と呼ばれる脂肪の細胞を活発にして代謝を進める側に関わるとされています。
ただし、どういう動かし方がいちばん分泌を促すのかは、はっきりしていません。一般には高強度インターバルトレーニング、HIITと呼ばれる形式や、筋力トレーニングが挙げられます。ただ、強度の高い運動はけがの要因になることもあります。選び方は慎重にしたいところです。
関節は、動かした範囲のぶんだけ保たれます
二つ目が、関節の動く範囲です。関節がどこまで動くかという範囲は、体の柔らかさと動きの幅を表します。この範囲を、関節可動域と呼びます。年齢や体の状態に応じて可動域を最大限に保っておくと、けがの予防や動きの質につながります。範囲が広がると筋肉の縮み方が効率よくなり、全身の釣り合いが保たれる、という見方もあります。
三つ目が、関節の中の潤滑液です。関節を上手に動かすことで潤滑液が出やすくなり、潤滑液と動く範囲は互いに関係し合っています。どちらか一方だけを見ても足りない、ということになります。
伸ばしながら力を出す、という使い方があります
四つ目が、伸ばしながら力を出す使い方です。筋肉が力を出す形はひとつではなく、伸びながら力を出す、という形もあります。これを遠心性収縮といいます。この形を使ったストレッチについては、2014年の安藤らの報告があります。標準徒手医学会誌に載ったもので、従来の静止して伸ばすやり方と比べ、短い時間で同じ程度の即時の可動域改善が得られた、という内容です。筋肉への負担を最小限に抑えながら、柔らかさと筋力を釣り合いよく高める形として組み立てられています。
五つ目が、反射を強く出さないことです。急に伸ばされたときに筋肉が反射的に縮む働きがあります。これを伸張反射と呼びます。これが強く出るとけがにつながることがあるため、反射が起きない範囲で、無理なく伸ばすことになります。
なお、伸ばしながら力を出すやり方は技法が難しく、誤った使い方ではけがのリスクが高くなります。広く普及していないのは、そのあたりが理由かもしれない、という私見が添えられています。
五つに分けると、見る場所がはっきりします
筋肉から出るもの、関節の動く範囲、関節の潤滑液、伸ばしながら力を出す使い方、そして反射を強く出さないこと。この五つをまとめて扱うのが、EKOフィジカルの組み立てです。分けておくと、いま自分がどこを扱っているのかが見えます。関節も人生も緩くいけば、動く範囲は広がります。
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