見た瞬間に、「効きそう」と決まってしまうことがあります
「この食品で痩せる」「この水を飲めば病気が治るらしい」。世の中には、科学的根拠が十分でない健康情報があふれています。
一時期、バナナダイエットが流行しました。「毎日バナナを食べたら痩せる」と多くの方が思い込み、スーパーマーケットで買い占めが発生するほどでした。論理的な思考が備わっていればこうした勘違いは生まれにくいのですが、普段から論理的に考える習慣がないと、この種の商法に引っかかりやすくなります。
水の話も同じです。「病気が治るらしい」「痩せるらしい」「肌がきれいになるらしい」。この水に本当にそれだけの効果があるなら、世界中から感染症や病気が根絶されるはずです。ただ美味しいから、と人に勧める分にはまったく問題ありません。それが科学的な根拠に基づくものとして語られているとしたら、慎重に受け止める姿勢が大切です。
勘違いは、売り手ではなく見た人の側で作られています
科学的根拠に基づかない、いわゆる悪徳と言えるような商法には、巧妙な手口が見られます。たとえば、錆びた鉄に商品の水や飲み物をかけて、錆が取れる様子を映像で見せる。見た人は「この飲み物は人間の体にも良い効果がある」と誤解し、購入に至ります。
ポイントは、販売側がその効果を直接は言っていないことです。あたかも効果があるかのように勘違いする「紛らわしい」状況だけを作り、「勘違いしたのは、あなたです」という姿勢を取ります。
映像が示しているのは、水をかけたら(A)錆が取れた(B)、という「A=B」だけです。そこから「飲んだら(A)体内の錆も取れそう(C)」へ飛ぶのは、見た人の側の飛躍です。「A=C」を証明するには専用の研究が要ります。体内に鉄の錆が溜まっている人を集め、採血などでの定点観測を半年後、1年後、3年後、10年後と行い、初めて結果を論じられるのです。そもそも内臓や血液中に錆が存在するとしたら、それ自体が深刻な事態です。知識があれば「そんなはずない」とカラクリに気づけるでしょうし、知識がなくても「本当に効果があるのか」と吟味する視点は持てます。
法律が追いつく前に、自分で見分けられます
こうした「紛らわしい」表現は、景品表示法や特定商取引法、健康増進法によって取り締まられるべきものです。ただ、公に問題が発覚しない限り、取り締まりの目は届きにくいのが現状です。「言った・言っていない」論争や「勝手に勘違いしただけ」論争に、法令や規則が整うまでには時間がかかります。
今すぐできることは、消費者自身が批判的吟味の力を身につけることです。情報の真偽を慎重に検討し、科学的根拠に基づいて判断する。映像であれば、その「意図」に気づくことです。
見分けの手がかりの一つが、言い回しの慎重さです。「血管の機能を良くする可能性が示唆されました」のような表現は、証明に至っていない段階の誠実な言い方です。「可能性がある」「さらなる研究が必要である」も同じです。逆に、これをするだけで動脈硬化が進行抑制される、といった断定は、安易な結論にあたります。
立ち止まる一拍が、決めつけの代わりになります
日々流れる健康情報に対して、一度立ち止まり「本当にそうなのか」と考える姿勢が、ご自身と大切な方を守る力になります。健康診断でご自身の経過を確認しながら、健康を楽しんでいく。慎重な言い回しを、誠実さのしるしとして読む。
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