副業や起業で、最初に直面するのが線引きです
理学療法士や看護師といった国家資格を持つ方が、オンラインのヘルスコーチとして事業を始めたとします。そのとき、利用される方を病院のときと同じ「患者さん」として扱ってしまうと、医療とビジネスの境界が曖昧になり、付加価値が下がりやすくなります。満足いただけない誤解やトラブルにもつながります。
クライアント、ご利用者様は、自らサービスを選び、対価を支払う自立した存在です。一方、病院や施設で接している患者さんは、サービスのお客様ではありません。今すぐ誰でもいいから助けを必要としている方で、心理的にも社会的にも依存的な傾向を示しやすく、支援を要するフェーズにあることが多い。依存できるものを探している状態、と言ってもよいと思います。
その依存的な立場を悪徳商法にしてしまわないために、医療従事者は国家資格という最高位を与えられ、徹底した倫理観を学び、実践の中で身につけてきました。副業や起業を志す医療従事者は、ほぼ100パーセントがこの線引き問題に直面します。放置すると自己犠牲や混乱を招きやすく、事業の持続が難しくなることもあります。
同感と共感は、別のものです
対人援助を長く続けるには、共に感じすぎない距離感が欠かせません。相手の苦しみや現実を自分のものにしてしまうと、燃え尽きてしまう、専門性を発揮できなくなる、私生活にも影響が出る、ということが起こります。逆に距離を取りすぎると、冷たい、見放されたと感じさせてしまうこともあります。
同感は、相手と同じ感情になってしまうこと。巻き込まれる側です。共感は、相手の感情を理解しながら、自分は冷静でいられること。専門性が保たれる側です。同感で寄り添いすぎると、援助する側が疲弊します。持続する支援には、共感を土台にした距離感が向いています。
ただの顧客でもなく、ただの症例でもなく、それでいて人生を背負いすぎない。この関わり方が土台になります。
届かない層がいるのは、力不足ではありません
自立型のトレーニングプログラムには、届きにくい層がいます。日々の生活やお金に追われている方。今すぐ誰でもいいから助けてほしいと感じている、依存的な状態の方。思考や美学に価値を見出す余裕がないほど、毎日がお辛い方。
こうした方に届かないのは、提供する側の力不足ではありません。単に対象層が違うだけです。今すぐ誰でもいいから助けを求める状態は、医療や福祉の領域にあたります。日本は、そのインフラが整っている珍しい国のひとつです。
この違いを理解しないまま全員に届けようとすると、事業としても、援助する側自身としても、持続が難しくなります。医療の基本は、全員の命と健康を守ること。ビジネスの基本は、価値を理解できる人に届けること。目的そのものが違います。興味のない方には、今は届かなくてもよい。いつか興味が出たときに来ていただけるよう、日々研鑽するだけです。
伴走はしますが、人生を背負うのは本人です
このスタンスは、国際的にはプロフェッショナルの距離感として標準です。欧米ではクライアント主体、自己決定の尊重が基本で、背負うのは本人であることが誠実さだとされ、援助者のスタンスがぶれないほど評価が高くなります。
日本では事情が違います。お客様は神様という文化が根強く、受け身型のサービスが当たり前で、学校や病院で言われた通りにする受動的な習慣が染みついています。すぐ効く、やってもらう型が好まれ、サプリや整体やダイエットがその例に挙がります。そのため、主体性が求められるプログラムは冷たいと誤解されやすくなります。
けれど、いくらで全部やります、ここに任せれば大丈夫、といった広告が、人のメンタルや幸福の領域で成り立つかというと、そう単純な話ではありません。誤解を怖がらずに、丁寧に伝える力のほうを磨いていく形になります。
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