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薬を直接売るという選択が、流通のどこを削るか

製薬会社が薬局とPBMをバイパスして直接売る動きから、医療の流通構造の変わり目を読み解きます。

公開日:2025年10月17日 / 外で起きていること

ロシュが選んだ、二つの販売ルート

2025年、製薬大手ロシュ(Genentech)は、インフルエンザ治療薬「Xofluza」の直接販売モデルを開始しました。特徴は、従来の薬局とPBM、つまり薬剤給付管理をバイパスする構造にあります。

選ばれたルートは二つです。一つはAlto Pharmacyで、スマホアプリで完結し、当日配送、マージンは極小という形。もう一つはMark Cuban Cost Plus Drugsで、原価に15パーセントと送料を足した価格で売る超低コスト薬局です。

価格の決まり方が外から見える、という点が共通しています。従来型の流通ではなく、価格透明性と利便性を重視した新世代型と言えます。

大手薬局が外された理由

ロシュは、CVS・Walgreens・RiteAidといった大手を意図的に外しました。背景として挙げられているのは三つです。PBM経由は価格が不透明であること。リベート構造が複雑であること。そして、消費者の信頼感が低下傾向にあることです。

CVSは米国最大のPBM事業者であるCaremarkを抱えているため、直販と透明価格を掲げる動きからは距離を置かれた形になりました。

影響を四つの欄で見ると、性質が分かれます。店頭の一般薬の売上への影響は軽微で、Xofluzaが処方薬中心であるためです。PBM事業は長期のリスクで、メーカー直販が広がるほど交渉手数料のビジネスが削られます。ブランド認知はマイナスで、高いと見られやすくなるリスクがあります。そして対応策として置かれているのが、保険と遠隔医療で入口を押さえる、という一手です。

外された側が持っている資産

CVSには、すでに防御策となる資産があります。医療費の入り口を握るAetna保険。日常のプライマリケアの接点となるMinuteClinic、つまり店舗内診療所。アクセスの幅を広げる遠隔医療と在宅ケア。そして調剤予約や健康管理アプリというデジタル接点です。

薬そのものではなく、医療アクセスの入り口全体を握ることで収益基盤を維持するモデルへとシフトしている、という読み方になります。

政策の側では、薬価直販ポータルとして構想・推進が報じられているTrumpRxがあります。製薬会社と患者を直接つなぐ枠組みで、進捗や詳細は流動的とされ、CVSは現時点では外部に位置していますが、将来的に仲介パートナーとして再参入する余地が残されています。株価の水準としては60から70ドルのレンジという数字が置かれていますが、これは2026年4月時点の参考値であり、特定の銘柄の売買をすすめるものではありません。

日本の専門職が、写し取れること

この攻防が示しているのは、中間に立つ事業の脆さです。交渉と取次で手数料を得る位置は、上流と下流が直接つながった瞬間に問われます。

一方で、CVSが守りに置いたのは入口でした。保険、診療所、遠隔医療、アプリ。どれも薬を売る機能ではなく、人が医療に入ってくる場所を押さえる機能です。取次の側に立っているのか、入口の側に立っているのか。この二つは、構造が動いたときの受け方が同じではありません。

製薬・保険・薬局の垂直統合と直販モデルの攻防は、日本の医療専門職にとっても、今後の医療ビジネス設計や副業・起業の発想に直結するテーマです。自分の仕事がいま、取次の側にあるのか入口の側にあるのかを一度書き出してみると、次に足す一手が見えてきます。

※本記事は情報提供を目的としており、医療行為・心理療法ではありません。個人の感想であり、効果を保証するものではありません。
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